ウルルであなたとシャンパンを
駅を使い慣れた人間特有の感覚だろうか、すぐに香耶は迷うことなく、駅を横断する広い通路を見つけ、笑顔になった。
香耶の歩いてきたのと同じ方角から流れる人達が多いのは、きっとまだ午前中だからだろう。
きっと同じように観光で、オペラハウスに来たんだろう。
様々な人種の人達で賑わう通路に、香耶は心が浮きたつのを感じた。
それと同時に漂ってきたのは、様々な食べ物の香り。
ある程度の規模の駅がそうであるように、このサーキュラーキーの駅でも、人通りの多い通路の両脇は食べ物の店が並んでいるらしい。
お菓子のような甘い匂いに、揚げ物の匂い、それにスパイシーな肉か何かを焼くような匂いもする。
何かの軽食なのか、紙に包まれたものを受け取る人を横目で眺めながら、香耶は朝食でいっぱいのはずのお腹をさすっていた。
2時間くらい前に朝食を食べたばかりだけれど、こういう匂いは食欲を刺激する。
昨日と同じように1人で入れる店が見つからなかったら、このあたりのお店でなにか買ってもいいかもしれない。
そんなことを考えた次の瞬間、連絡通路の終わりで、香耶は思わず足を止めた。
「わぁ……」