ウルルであなたとシャンパンを

2人の世界に入り浸っているのだから、気づかれる前に、と、香耶はそこから少しの距離を取ってみたが、やっぱりどうも気になってチラチラ見てしまう。

モデルのように美しい男女がイチャイチャしてるのって、本当にキレイ。

それに、スキンシップがものすごく自然。

観客気分で楽しんでいた香耶の胸が、チクンと小さな痛みを訴える。

なんだか泣きたくなっちゃうような、切ない感じの痛み。

この場所も、こんなシーンも、初めて見るものだし、何もツラい記憶に繋がるものではないのに……

だんだん大きくなるオペラハウスに向かって足を進めながら、香耶はそっと胸の真ん中を押さえた。

それで収まる痛みではないのはわかってはいたけれど、その他に、どうしたら良いのかもわからなかったから。

香耶は消えない痛みを胸に抱いたまま、白く光る建物の中へ入って行った。



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