ウルルであなたとシャンパンを
「え?」
「女性と思ったから、ガイド希望した?男だって知ってたら頼まない?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
もちろん、最初に男性だとわかっていたら、あのボタンをポチったりしなかった。
しかも、こんな美形の男性だなんて……
けれど、そのことを本人に大して口にできるほど、香耶は強い人間でもなくて。
戸惑いに視線を迷わせていた香耶は、目の前で答えを待っている子犬のような瞳に会い、ビクッと体を揺らす。
ちょっとぉ、その顔でそんな目……反則でしょう!
男の人をかわいいと思ったことなんてなかったけれど、これはちょっと……いや、かなりドキッとするかもしれない。
「あー…………いえ、大丈夫です」
どうにか絞りだした香耶の返事に安心したように笑うと、ルカさんは勢いよく片手を差し出した。
「それじゃ、よろしく!ヤマモトさん!」
見たことのある姿勢に意味はわかったものの、握手をする文化で育たなかった香耶は一瞬ためらった後で遠慮がちに手を差し出す。
「よろしくお願いします……」
握った手は、骨っぽいがっしりした力強いもので……
ああ、やっぱり男の人なんだと、香耶は実感したのだった。