ウルルであなたとシャンパンを

最初にルカさんと会った時には、こんな人の前で飲んだり食べたりできない!と思っていたけれど、あれこれと教えてもらっているうちに、最初の緊張はほとんど解けてしまった。

美人は3日で見飽きるというけれど、最初は圧倒されてしまった美貌も、今はルカさんの気安い態度のせいか、印象がまるで違って見える。

キレイでかっこいいのは、もちろん変わらないわけだけれど、一緒にいて、普通に楽しい。

こんなに早く打ち解けた人は、生まれて初めてかもしれなかった。

「その方がいいよ」

ふいに投げかけられた言葉に顔を上げると、ルカさんはコーヒーカップを手にしたまま、その不思議な色の目を優しく細めた。

「さっきの話し方より、今の方がいい」

なにかと思ったら、話し方のことか。

見つめられて、不覚にもドキッとしてしまった自分を恥ずかしく思いながら、香耶は何ともない風を装って、目の前の美味しそうな赤いタルトにフォークを突き刺した。

「タメ口の方が話しやすい?」
「……タメ口?どういう意味?」
「敬語を使わない言葉使いってこと」
「ああ、そうだね。うん、タメ、ぐち?の方がいい。敬語は、まだちょっと上手じゃないから」
「上手じゃない?すごくナチュラルっていうか、普通に聞こえるけど」


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