ウルルであなたとシャンパンを

「うん、無い。大丈夫」

香耶が答えるとすぐに真っ白なエプロンを腰につけたスタッフさんがやってきて、ルカは流れるようなスピードの英語で話し始めた。

「アルコールは飲める?」
「うん」
「ワイン?ビールがいいかな?」
「……じゃあ、ワインで」

スタッフの男性と話す合間に香耶に目を向け、優しい口調で確認してくれるルカは年下なんてことを忘れちゃうくらい紳士的で、大人のふるまいが板についていた。

そんな様子を眺めていたスタッフさんが微笑みを深めて何事か言うと、なぜかルカは一転して少年のように初々しい照れたような表情を浮かべた。

「……どうかした?」
「いや、なんでもない」

口元を引き締めたルカが軽く咳払いをしてメニューを閉じ、早口で何か言うと、スタッフの男性はくすっと小さく笑い、香耶の方にも楽し気な笑顔を向けた後、奥へ続く入口へ去っていった。

「なんて言ったの?」
「…………注文は以上って言っただけだよ」

それだけで、スタッフさんがあんな風に笑うかしら……?

ひっかかるものを感じてじいっと見つめると、ルカはその視線を交わすように……または、ごまかすように、男性としては長めの髪を指先ですくって耳にかけた。


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