ウルルであなたとシャンパンを
話の内容はわかったけれど、目の前のモデルのような人に、香耶の知っている帽子に軍手などの農作業スタイルはあまりにも似合わな過ぎた。
「……ぷっ、あはははは」
頭の中のルカの姿に思わず吹き出してしまうと、ルカは不満気に唇を尖らせて言った。
「ちゃんと世話してやらないと、ワインの味に影響するんだ……ああいう仕事も大変なんだよ」
まるで手慣れた大人の男性のようだった、ついさっきまでとは別人のような子供っぽい表情に、少しだけテンポを速めていたらしい心臓が落ち着きを取り戻す。
ステキなお店で、ステキな男性と二人きり……
自分でも気づかないうちにデート気分になってしまっていたらしい。
ちょっと気取った感じで伸ばしていたらしい背筋を楽な形にして、香耶はルカに小さく笑いかけた。
「葡萄のことはわからないけど、農業が大変なことはよく知ってるわ。祖父母がやっていたから」
「祖父母?……ああ、カヤのおじいさまとおばあさまもファーマーなのか」
こもるような本場の発音だったけれど、耳にしたことのある単語に香耶は軽く頷いた。
「子供の頃はよく畑で遊ばせてもらっていたの。もう、ずいぶん前に亡くなってしまったけれど」