ウルルであなたとシャンパンを

・夢じゃなかった


おいしいシーフードに、おいしいワイン。

目の前には、いつまででも鑑賞していられそうな美男。

ちょっと前ならドキドキして食べられなかったかもしれないけれど、料理が運ばれてくる前の1杯が食欲を増進してくれたらしい。

オーストラリアでは、日本の居酒屋さんのようなお通しシステムがないらしく、空きっ腹にワインを流し込んだ香耶は、恥じらいも遠慮もどこか遠くへ吹き飛んでしまった。

小さなレモンが添えられた大きな殻入りの牡蠣に、何種類かのフライ、ボイルされた海老などがアフタヌーンティーのように2段重ねになった皿に山と盛られた料理に歓声を上げ、パスタに飛びつき、ワインのおかわりをグラスに何度か注がれて…

思いっきり楽しんでしまった夜に後悔はないが、曖昧な記憶は断片的でシーンが飛び飛びになっている。

「お金…どうしたんだっけ…?」

寝ぼけまなこで起き上がり、ヨロヨロとベッドを降りて足元に放り出されていたバッグを開ければ、財布の中身は昨日の記憶のまま…… 1枚も減っていない気がする。

「……え?」

もしゃもしゃと寝癖だらけの髪をかき回した香耶は、財布の中身を全てベッドにぶちまけて、カラフルなお札の枚数を確認してみる。






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