ウルルであなたとシャンパンを

眠い目をこすりながら、のろのろと腕時計を確認すれば、もうしばらくで到着、という時間になっている。

ずいぶん、ぐっすり寝てたんだな、あたし。

大きなあくびをして、座席内でできるだけの伸びをすると、少しだけ視界がクリアになる。
もう一度、窓の外に目をやった香耶は、はるか下に黒々と広がるものを見つけて、あ、と思わず声を漏らした。

オーストラリア。

もちろん、地図で見るような全体の形ではないけれど、その端っこがついに見えて来たらしい。

何時間も飛行機に乗ってから、約10時間。

まだ実感は湧かないけれど、今から到着するのは、日本とは全く別の国。

なんというか、勢いで申し込んでしまった、この旅行だけれど。

来たからには、楽しもう!
嫌なことは全部忘れて、一人旅を満喫するんだ!

そう自分に言い聞かせると、香耶は、何かを決意したようにきゅっと唇をひきしめ、座席の下に置いていたバッグの中からスマホを取り出した。

数秒ほど見つめていると、香耶の目に離陸した時にあったのと同じ影が揺れ、瞳の表面が少しだけうるみ始める。

いろいろな想いがかけめぐっているのだろう。

しかし、それを振り切るように、香耶はスマホを握りしめ、しっかりと横のボタンを押して電源を切った。


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