ウルルであなたとシャンパンを
「あの、大丈夫……あー……OK、なので」
今の状況をなんと言ったらいいかわからず、おかしな日本語を口にしてしまう自分を恥ずかしく思いながら、手のひらを相手に向けるようなジェスチャーをすると、CAさんは、わかった、というように頷いた。
香耶の言葉というより、その仕草で理解をしてくれたんだろう。
「Let me know if you are not feeling okay.(もし具合が悪くなったら教えてくださいね)」
ネイティブのスピードでの流れるような英語の意味はわからなかったけれど、多分、大丈夫ならよかった、とでも言っているのだろうと思った香耶は、小さく頷いて見せる。
英語のわからない日本人の対応に慣れているのだろうか。
金髪のCAさんはおだやかなほほえみを崩さないまま、香耶に小さく頷きを返して、頭上の荷物入れを確認しながら、通路の奥のカーテンをくぐって行った。
人種や言葉は違えど、1人で涙をこぼしている女の理由なんて、きっと、そう変わらないんだろう。
そう思ったら、泣いている自分のみっともない姿を誰かに見られていないかと、今更ながらに人の視線が気になり始めた。
隣に人がいないのはわかっていたので、香耶はそろそろと首をのばすようにして、できるだけ不自然に見えないように周囲を見回す。