ウルルであなたとシャンパンを
慌てたような彼の声と同時に、腕を掴まれて。
足を止めると、香耶の中でこらえていた涙がぶわっとあふれ出た。
「…………離して」
腕を掴まれ、もう片方の手に荷物を持った香耶は、頬をつたっていくぬるい涙を拭くこともできず、低い声で言った。
「大きな声、出してもいいの?」
さっきもそうだったけれど、騒ぎになることを恐れる彼だから、この言葉は効果的だとわかっていた。
けれど、一瞬ゆるんだ手は、すぐに香耶の腕を握りなおす。
「ちょっと……話そう」
「は?」
思ったままの言葉を吐いて、香耶は涙で濡れた顔を彼に向ける。
「……話す?何を話すっていうの?話すことなんてある?」
香耶の涙を見た彼が、気まずそうに目をそらして言う。
「いや……何って……」
「話すことなんか、ないでしょ」
「でも……これで終わりってなんか……」
なんかってなんだ、なんかって。
ふつふつと湧いてくる怒りで、荷物を持つ手が震えた。
「付き合ってると思ってたのは、私だけじゃなかったんだ?」
唇をかんだ香耶が、いらだちをこらえながら言うと、彼はパッと顔を上げて言った。
「それはそうだよ!俺はちゃんと……香耶とは真面目に付き合ってるつもりで……」