ウルルであなたとシャンパンを
気持ちはあった、と。
そう言えば許されると思っているのか、ほっとしたような顔に、香耶はお腹のなかで煮えたぎるいらだちを押さえきれなくなった。
「……奥さんが、いるのに?」
真面目に付き合ってた?
奥さんがいることを隠して。
自分の都合のいい時にだけ、私を呼び出して。
それが、真面目に付き合ってたってことなの?
「いや、それは……」
「ずっと一緒にいたいって、言ってたよね」
「それはさ……その時の空気っていうか……」
「新婚旅行はハワイに行きたいって言ったら、いいねって言ってたよね?ハワイいいね、行きたいねって……」
「それは……だって、ハワイは行きたいなって思ったし……」
「好きだとか……愛し、てるとか……」
口にした事実に、のどの奥からこみ上げてきた嗚咽が詰まったように苦しくなった。
「大丈夫?」
熱い塊がのどの入口に詰まって、げほっと嫌な咳が出た。
苦しさに体を折った香耶の耳の近く。
優しさを装った彼の声がして、腕をつかんだ手が肩に置かれた。