ウルルであなたとシャンパンを
抱きしめられた腕の中、嗅ぎなれた男の匂いに、ぼろぼろと涙が落ちた。
「……やだ……もう、こんなの、って……」
しゃくりあげながら言う香耶をますます抱きしめて、彼はこれまでに何度かしたように、ゆっくりと香耶の髪を撫でる。
「傷つけて、ごめん……でも、俺の香耶への気持ちは変わらないから」
…………この男は……何を言ってるんだ?
ヒクッと香耶の肩が揺れて、すうっと詰まっていた熱い塊が落ちていく。
しゃくりあげていた香耶の呼吸がおさまっていくのを、自分の言葉のおかげだとでも思ったのか、香耶の体を拘束する腕にぎゅっと力が入る。
「俺にできることなら、なんでもするよ。だから……これからは友達っていうか……いい関係でいよう」
香耶の嗚咽が、完全に止まった。
「…………友達?」
「うん……友達っていうか……その、友達以上恋人未満っていうか……」
泣きぬれた顔のまま、見上げた男の目には、見覚えのあるアノ色が浮かんでいて……
香耶の視線は、自然と、それに繋がる、男の背後にあるベッドに移動した。
吐き気がする。
どうも、彼と香耶の"友達"という定義には、決定的な違いがあるようだ。
ついでに、"恋人"の定義も。