ウルルであなたとシャンパンを
あたし、こんなじゃなかった。
こんな風になる予定は、なかった。
なのに……どうして?
何が悪かったの?
あたしが悪かったの?
どうしてこうなったの?
どうして……
何度も繰り返した問いの答えは今日もでず、香耶の体はまたひとつ、冷たい石の塊でも飲み込んだみたいに重くなるだけ。
さっきの親子連れを見てしまったせいで、嫌な想像が浮かぶ。
彼も、今頃あんな風に……
窓の外の、きらめく小さな灯りの1つが、彼の家なんだろうと思ったら、窓の中の女の顔が醜く歪んだ。
その女の顔を見たくなくて、香耶は窓についたスライド式の扉を閉め、頭から薄く頼りない小さなブランケットにくるまる。
ただ、出会って、好きになっただけ。
できるなら、ずっと一緒にいたいと思ってた。
彼がもう、他の誰かを選んでいたなんて知らなかった。
ずっとずっと、最初から……
何も知らずに、私だけが夢見ていたなんて……
悲しみが少しでも消えればいいと思いながら、香耶は頭の上までブランケットを引き上げ、小さく声を押し殺してすすり泣くことしかできなかった。