ウルルであなたとシャンパンを

「ウソなんかじゃ……」
「ウソだったでしょ。彼女がいないって、フリーだって言ってたことも、私を彼女だって言ってたことも。あなたが言ってたことは全部、ウソだった」
「ウソじゃないこともあったよ」
「……どうだっていい。今更そんなこと」

傷ついた、とでも言いたげな態度にいらだちを感じながら、香耶は言った。

「とにかく、こんな……待ち伏せみたいなことしないで」
「…………」
「会社に来たり、電話してくるのもやめてください。迷惑です」

いくら常識の通じない相手でも、ここまで言えばわかるだろう、と言い切ると、男は初めて、ショックを受けたような顔をした。

「それは無理だよ……俺は仕事だし、あそこの担当で……行かないわけにはいかないんだから」

やめて、と香耶が言っているのは、今日のようなプライベートの用件でのことだけれど……
この期に及んで、自分の都合だけをを主張する男にムッとした。

「……私だって、仕事だし。あそこが職場なんだけど?」
「だって、派遣でしょ?」
「は?」

唖然とした香耶を目の前に、男はさも当然というように言った。

「だから、所詮、派遣なんだからさ。もう辞めればいいじゃない」


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