ウルルであなたとシャンパンを
言われた言葉の意味はわかったけれど、その結論に至った神経は全く理解できなかった。
「……どうして、私が辞めなきゃいけないの?」
「だって……こんなになっちゃったら、気まずいでしょ?今朝みたいな対応されたら、変だって思われるだろうし……」
確かに、今朝の香耶の対応は良くなかった。
けれど、その前に、私用で電話してくるのは変じゃないのか?
「周りにバレたら困るんだよね……一応、客先だし……あそことは、けっこう取引あるしね」
一応も何も、香耶が働いている企業は年間にかなりの額を、この男の勤める会社に支払っている。
他の取引先は知らないが、男の持つ取引先……営業としての評価の大半である売り上げの、かなりの割合を占めるお得意さんだ。
以前、男がそう言っていたのを、香耶はよく覚えていた。
そして、その企業の受付に座っている香耶と、商談に来る営業が顔を会わせないようにするのは難しい。
会えば、ぎこちない対応になってしまう可能性は高いと、今朝のことで香耶にもよくわかっていた。
けれど……男の言っていることは、一見、筋が通っているように見えて、どうにも話の始まりがおかしい。
「……バレたら困るのは、あなたでしょ?」