ウルルであなたとシャンパンを
「いやだって……それ以上はちょっと……その、俺の小遣いでは出せないっていうか……」
小遣い制だったのか……ダサッ!
「……よくわかってないみたいだけど」
ネクタイを締め上げるようにグッと引き寄せると、男は驚愕に目を見開き、ごくり、と生唾を飲み込んだ。
「私、あなたに騙されてたの。いわゆる…被害者なのよ?渡すなら、それは生活費じゃなく、慰謝料なんじゃないの?」
「い、慰謝料?!」
香耶の口から出た単語に、怯えたような声を出す男。
「10万なんて、私の1カ月のお給料にも満たない額でどうにかできると、本気で思ってるの?」
「いや、その……できる限りの誠意を、と」
「そんなんで、誠意なんて感じられるか!」
「す、すみません……」
お金なんていらない。
香耶が欲しかったのはそんなものじゃなく、ごく普通の幸せだ。
「お金で解決するにしても、安すぎるでしょ。ケタが違うんじゃないの?ケタが」
「け、ケタ?」
「そうよ、ゼロが足りないって言ってるの」
ネクタイの結び目の辺りを突き放すようにすると、男はあっけなく態勢を崩して尻もちをついた。
立ち上がろうともしない男を、香耶は道路にへばりついたガムでもみるような見下ろして言った。
「……わかったら、2度と私の前に現れないで」