ウルルであなたとシャンパンを
・雑踏に紛れて
すう、と、水面に上がる時のような浮遊感。
覚醒した香耶がぼんやりした目を開けると、そこには夕暮れのオレンジ色の光が差しこんでいた。
知らない部屋だ……
そう思った香耶は、夢の続きのような感覚で目に入る景色を眺め、ゆっくりと緩慢な動きでまばたきをした。
2度……3度。
まばたきを重ねるごとに、脳が覚醒して、今の状況を思い出した香耶は、自分が寝ているベッドの横に手を伸ばし……布しかない指先の感触に、はぁ、とため息をついた。
香耶の部屋のベッドは、シングルサイズ。
手を伸ばせばすぐ、ベッドサイドの小さな棚に置いたスマホが取れる。
しかし、今、香耶が寝ているベッドは思いきり手を伸ばして、ようやく端に指先が届くくらいの、初めての大きさで、パリッとした白いシーツがきちんとかけられている。
起き上がれば、部屋に入った時に脱ぎ散らかした洋服と靴が、ベッドの足元にそのままの形で寝そべっていた。
「ここは……」
小さくつぶやいて、ブラトップにショーツのラフな下着姿でシーツの間を抜け出した香耶は、カーテンが開いたままの窓辺に立つ。