ウルルであなたとシャンパンを
思い出す度、こらえきれなかった涙は、なぜか、あふれることはなく、今はひどく喉が渇いているだけだった。
「あは……涙も枯れるって、こういうことなんだ」
自嘲気味に笑って、香耶は助けを求めて前方に視線を向けた。
誰かいないかとキョロキョロしていると、前方の通路の奥でカーテンが揺れ、昨日の金髪のCAさんが香耶の視線に気づいて近づいてきてくれた。
「What's the matter?(どうしました?)」
「ウォ、ウォーター」
かすれた声でそう言うと、CAさんは不思議そうな顔をした。
声が小さかったのかもしれない。
そう思った香耶は、今度は少し大きな声で言い直してみる。
「ウォーター……プリーズ」
ぎこちない香耶の言葉を聞いたCAさんは眉をひそめ、香耶の言葉に似た感じの単語をいくつか発音し、確認してくれるが、どれも違うような気がした。
焦った香耶は、思いつく限りの言葉を並べ、コップを持って飲むようなジェスチャーも加えて、もう一度繰り返す。
「ウォ、ウォーター……ドリンク、こういうの……飲む……ウォーター、プリーズ」
「water?(お水ですか?)」
ようやくCAさんが聞いたことのある単語を発音して、香耶は思わず、彼女を指さし、大きめの声を出してしまう。
「そう!それ!」