ウルルであなたとシャンパンを

・オペラハウスと恋人達


目が覚めると、気分はいくらかマシになっていた。

手にしたまま眠ってしまったのか、枕のそばに落ちていたスマホを眺めて、唇を引き結ぶ。

日本では何度もやろうとしてできなかった、あの人とのやりとりの削除をできたのは、香耶にとって大きな1歩と言えた。

スマホのメッセージを消したくらいで、何かがあるわけではないけれど……

もう、終わったことに振り回される自分は、今度こそ終わり。

今日から、私はリセットした人生を楽しむんだ!

この旅行に行くと決めてから何度目かの宣言を心の中で叫んた香耶は、動きやすいデニムとTシャツに着替え、朝食を取りに下へ降りることにした。

ロビーの隣、広々とした場所に並べられたテーブルは多かったけれど、座っている人は少ない。

食べ物が並んでいるテーブルの端でトレイとお皿を取って、ビュッフェ形式の朝食をワクワクと眺める。

最初に目についたのは、カゴに盛られた小さなリンゴだった。

日本では冬によく見るリンゴだけれど、オーストラリアのリンゴはとても小さくて、片手に乗ってしまうくらいのかわいらしい大きさ。

カットされることもなく、まるごと置いてあるのは、そのせいだろうか?

それとも、ただの飾り?

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