【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「殿下に薪を拾わせておいて、アナタは草遊びですか」
厭味ったらしくクラウトが突っかかってくる。
さすがに私はため息を吐き出した。
「いいから見てなよ」
縒り合わせてつくった草の縄に石を結び付けて、木に向かって投げた。
止まっていた鳥の足に絡まり、鳥が落ちる。
私はそれを拾い上げ、鳥の足を縄で縛った。
「夕飯、肉食いたくない?」
「は?」
それを聞いたシュテルが噴出して笑った。
クラウトが顔を真っ赤にして小刻みに震えている。
私は何をやっても彼を怒らせてしまうらしい。
「な、弓には自信がないんですね? 背の弓を使わずにワザワザそんなやり方をするなんて、さすが田舎者ですね」
「弓は戦に使うんだ。勿体ないでしょ」
「物資は重要だ。現地で調達できればそれに越したことはないね」
シュテルがフォローを入れるから、さらに彼の怒りに火が付いた。
「私だったら、鳥じゃなくもっと大きな獲物を狩ってみせます!」
叫ぶや否や、剣を抜いて、独りで森の奥に向かって駆けだす。