【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「さっきの、フェルゼンとキスしてるように見えた。あれ、見たら周りはベルンは男色(そういうの)もありだと思うよ?」
「誤解だって」
「わかってる、けど」

 肩にあった手がスルリと首筋を上がって、頬を撫で耳に触れた。
 ゾクリと背中に何かが這い上がる。
 初めての感覚に、戸惑って息が苦しくなる。顔が熱くなる。

「フェルゼンのものなら、皆諦めるよ。でもそうじゃないんだろ? フェルゼンの女好きは有名だし。君の片想いならチャンスがあるって思われる」
「考えすぎ」

 耳にあった手のひらが頬を滑って、指先が唇を押さえる。黙れというのだ。
 触れた指先から、熱が伝わってしまいそうで恥ずかしい。
 
「考えすぎじゃない。心配だよ。ねぇ、誰のものにもならないつもりなら、軍にいる間だけは僕のもののふりをしなよ」

 シュテルのものって、付き合っているふりをしろというのだろうか。

 シュテルの指先が、私の唇をゆっくりとなぞる。顔が近づいてきて、シュテルの鼻が触れてしまいそうだ。
 息をするのも恥ずかしくなる。嫌だ。
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