【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「そんなの、イヤだ。変だ」
声を絞り出して、睨みつける。
「僕じゃ気に入らない?」
シュテルは指を止めて、目を細め冷たく微笑んで見せた。
天使の風貌でどんだけ悪魔なんだ!
「そうじゃない。私がそんなことでシュテルを利用すると思ってるのか。見くびらないで欲しい」
そんなことしたら、フェアな友達でいられなくなる。今後だって宿営はあるのだ。自分の身は自分で守る。他の皆もそうしているのに、自分だけ嘘ついて甘えるなんて変だ。
シュテルは体をこわばらせた。そしてそっと手を引く。
「ゴメン。そういうつもりじゃなかった」
「わかってる、なんかわかんないけど、心配してくれてるんでしょ? それは嬉しい」
「……こういう場所は、瘴気にあてられて変になる奴がいるんだ。ベルンに嫌な目にあって欲しくない。そのためになら利用して欲しいと思った」
ションボリとするシュテルを見て、私はため息をついた。