【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
10.クラウト・フォン・ヴルツェル(クラウト視点)
宿営地に戻れば、熊を担いできた私にみんながギョッとした。
「クラウト、その熊はどうした?」
「ベルンシュタイン先輩が、熊を倒しました」
答えれば、ドッと歓声が上がる。
「小熊が親熊倒すとか、最強か」
「今夜は肉か!?」
「でかした! ベルン」
今夜は干し肉だと皆思っていたからテンションが上がっている。
しかし、それを咎めるようにフェルゼン先輩がベルンシュタイン先輩に詰め寄った。
「って、……フェルゼンが怒ってる」
「うわー、あれマジのヤツだ」
「過保護だよな、ベルン強いのに」
「あの顔で、野生ではダントツだよな」
「全くだよ」
周りのみんなは面白そうに見ているけれど、私のせいでベルンシュタイン先輩が怒られるのは良くないと思った。
思わず事情を説明しようとすれば、ベルンシュタイン先輩が人差し指を唇に当て、口止めの合図を送ってくる。
シーッとか可愛い。なにあれ、さっき熊倒してきた人間と思えない。かわいい。
私の胸はキュンと高鳴った。顔が熱くなるのがわかる。