【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
そう思っていたのだが、今日の一件で見方が変わってしまった。
森に明るく、騎士道以外のサバイバルにもたけている。瞬時の判断力と、それを行動に移せるだけの実力の持ち主。剣の腕を甘く見ていたが、実戦ではそんなことは全くなかった。殿下のサポートを瞬時に理解し、魔法も使わず熊を倒したのだ。
すっかり打ちのめされた。
罵倒されても仕方がない私の行動に、ベルンシュタイン先輩は窘めただけでクドクドと言わなかった。怒れないのではなく怒らないのだと殿下に教えられ、そこにも痺れた。憧れた。
殿下に命じられ、私は熊を担いで帰路についた。
それが私にできる精一杯の反省だと思えたのだ。
重い熊を引きずりながら、殿下やフェルゼン先輩に認められるも当然だと理解した。嫌味ばかり言う可愛くない後輩のために、こんなに大きく強い獣の前に躊躇いもなく立てるだろうか。
少なくとも私には無理だ。
私は、この人が、ベルンシュタイン先輩が好きだと思った。
でも、アレを見てしまったら。
フェルゼン先輩と付き合っているのだろうか。
だとしたら私に勝ち目などない。
尋ねてみれば、殿下と共に否定する。
その様子から、もしかしたら殿下と付き合っているのではないかと思う。
そのままそれを尋ねれば、それもあっさり否定され安心する。
誰とも付き合っていないと否定される。
殿下やフェルゼン先輩と仲が良すぎるとは思うけれど、違うというなら信じたい。
だったら、少しの可能性はある。可能性があるなら諦めたくない、そう思った。