【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「やった! やったよ! シュテル!」
「……よか、……た」

 ぐらりとシュテルがふら付いて、私にもたれかかる。赤くなった頬、額に汗がにじむ。

「シュテル?」
「……ちょっとだけ、甘え……たい、気分?」

 シュテルは顔を歪めて笑って見せる。
 
「ばか! 何言ってんるんだ!!」

 シュテルの背中は、サラマンダーの炎でマントを焼き火傷を負っていた。私を庇ったせいだ。弓矢が散らばった時点で、私が気が付かなきゃいけなかったのに。

「褒めて……よ、ベルン」

 シュテルは歪に笑う。

 息ができない。苦しい。
 私は答えが上手く見つからなくて、慌てて氷の魔法でシュテルの背中を冷やす。

「きもち、いい」

 シュテルがホッとしたように呟いて、力を抜いた。

 重い身体が私にのしかかる。伏せられた睫毛が微かに震えている。苦しそうな吐息。
 私はシュテルを抱きしめた。
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