【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「ウォルフ! どうしよう、どうしよう、シュテルが! ねぇどうしたらいい?」

 どうしたらいいかわからなくなって、ウォルフに助けを乞う。このままだと、シュテルが死んでしまうかもしれない。
 私は治癒魔法なんか持っていない。サラマンダーの炎には魔力があるはずだ。普通の火傷では済まない。シュテルは金の属性だから、炎の魔法には弱いのだ。

「ねぇ、ヤダよ! こんなのヤダよ! 私のせいでシュテルが。氷の私が傷を受ければよかった」
「落ち着け!」

 ウォルフが一喝する。

 ビクリと体が震える。泣き出しそうになって唇を噛む。怖い。怖い。怖い。
 シュテルがいない世界なんて、イヤだ。

 ウォルフが私の頬をパンと両手で挟み込み、じっと瞳を覗き込んだ。
 頬がジンジンとする。

「しっかりしろ。大丈夫だ。助ける」

 ポロリと瞳から涙が落ちる。低くて深いウォルフの声。絶対の声。小さいころからウォルフの言うことは正しかった。間違いがなかった。
 ずっと兄のように慕って、信頼してきた人だ。ウォルフが言うなら大丈夫だ。
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