【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「……大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。だから、ちゃんと聞け」
私は瞳だけで頷く。
「いいか。お前が怪我をしなかったから、彼を助けられるんだ。分かったな? お前が彼を助けるんだ」
「……うん!」
「ここからだとオレ達の本営が近い。彼を運ぶぞ」
「わかった、私の馬で運ぶ」
「彼の馬は?」
「スノウだ。あの子ならついて来れる」
「スノウ? だったらこのお方はシュテルンヒェン殿下か!」
騎馬隊に緊張が走った。
ウォルフが手を上げて指令を出す。
「先に連絡をしろ。敵は炎のサラマンダーだと伝えろ! 殿下の属性は金だ! 絶対にお助けする!」
伝令が馬を駆る。
「お前は殿下の背中を冷やしながら、オレの後について来い」
「はい」
私は、青毛の愛馬レインに跨った。シュテルを向かい合うようにして馬に乗せ、胸で抱きながら背中を冷やす。
先を行くウォルフは、歩みやすい道を選んで騎馬隊の本営へと案内してくれた。