【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「イヤ?」
「離れるのは寂しい。でも、王子様を上手に乗せられるのはスノウしか出来ないことだと思うんだ。それで王子様が馬を好きになってくれたらいいなぁって思う」
「そうなの?」
僕はびっくりした。この子は、馬を信頼して、その信頼できる馬を王子に渡そうとしている。
「それで、スノウを大事にしてくれたら嬉しい」
馬を見て愛おしそうに笑う姿が切なくて、僕もこの子を大切にしたい、そう思った。
「そっか。スノウ……スノウ」
僕は、馬の名前を呼びながら、鼻先に頬を寄せてみた。スノウも優しい瞳でそれに答えてくれる。
初めての感覚に、ドキドキと心臓が高鳴った。
可愛い。
仲良くなりたい。
心からそう思った。
突然、バタバタと走り回る足音が響いて、僕は驚いて顔を上げた。
きっと王宮のものだ。
「どうしよう」
見つかったら連れ戻される。まだもうちょっとだけここに居たかった。