【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
お忍びで出ていた僕を除いて、表彰式が始まった。
僕は父の背中の後ろからその様子を眺める。
フェルゼンと彼が表彰台に歩み寄る。
青い髪の男の子は名前を呼ばれると、本当に嬉しそうに三位の台を眺めてから粛々とその台に上った。
僕はその名を忘れまいと心の中で復唱する。聞いたことのある姓だ。
フェルゼンは、雄たけびを上げてピョンと一位の台に飛び乗ったから、父上も兄上も笑った。
来賓席では彼らに手を振っている者がいた。確か一人は赤髪の元帥、もう一人は青い髪のひきこもり侯爵とあだ名されている人だ。そう、その人の姓は、そうだ。
僕は息を一つ吸った。時間がかかってもいい。諦めたくない。
父上の背中を見る。
そして意を決して、父を呼んだ。
振り返った父の瞳は、穏やかで優しく輝いていた。