【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「やぁ。フェルゼン。顔をあげてよ!」

 幼馴染のフェルゼンに声をかける。
 そう、フェルゼンみたいに友達になりたい。
 フェルゼンは舌を出して顔を上げた。

「殿下にはご機嫌麗しく」
「もう、そういう他人行儀はやめて! ここは僕の私室なんだから」

 意地悪く茶化す幼馴染をたしなめる。

 青い髪の男の子は、驚いた様子で僕らを見ていた。目が合ったから反射的にほほ笑む。

「君が、ベルンシュタイン・フォン・アイスベルク? 僕は、シュテルンヒェン。よろしくね」

 僕は右手を差し出した。今度は手袋なんかしてない手。

「よ、よろしくおねがいします? 殿下」

 恐縮した様子で手を出してきたから、僕はギュッと握り返した。すると彼も安心した様子で握り返してきた。

「名前ね、スノウのままにしたんだよ」

 そう告げれば、零れんばかりの笑顔で彼は笑ったのだった。


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