【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「なんで? 私の問題」
シュテルは目を細めて悪い顔で笑う。私の手をとって、指と指の間に自分の指を差し込んだ。
さっきのオイルが残っていて、ヌルリとした感触がする。恥ずかしい。
「わかった。もう言わない。知りたいことは聞けたから、とりあえず満足かな」
「ごめん、ありがとう」
「ううん。僕こそゴメン。今までと変わらずにいてくれる?」
「もちろんだ」
シュテルのことは好きだ。これが、キスしたいと思う気持ちと一緒かは分からないけど。許されるなら、まだ友達として側にいたい。
シュテルは満足げに頷いた。
「もう、就寝時間だ、帰るよ」
結ばれた指を離そうとすれば、オイルでヌルリと指が滑る。
その感触があまりにも唐突に艶かしく、思わずゾクリと戦いた。
「っ」
それを見て、シュテルが笑いを漏らす。
恥ずかしさで俯く。
「明日も来てね」
まるで悪魔の囁きのように、シュテルが耳元に風を吹き込んだ。