【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
馴染みのカフェに行けば、いつもの店員がいつもの席を用意してくれる。ウォルフはいつものようにブラックコーヒーを頼み、私はいつものように季節のパフェを頼んだ。そして、いつものようにそのパフェにはスプーンが二つと小さな取り皿がついてくる。このパフェはもともと大きすぎて、シェアして食べる人が多いからだ。
何もかもがいつもと同じ町の空気に安心する。
パフェをいつも通り取り分けて、小さな皿のほうをウォルフに渡した。これもいつものことだ。
「アイスベルクは変わりなくて安心した」
そう言えば、ウォルフは笑った。
「ベルン様はどうなんだ? 殿下の傷はもう良くなったか?」
「うん。処置が良かったみたいで綺麗だよ」
「……見たのか?」
「うん、見たよっていうか、私が薬を塗ってたから」
「なんでそんな使用人のようなこと。アイスベルク家の人間としての自覚が足りないんじゃないのか」
むっつりとする様子に笑ってしまう。アイスベルクは侯爵家だけど、あまり貴族らしくないのは承知のはずだ。だからこうやって町歩きしているわけだし。