【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「ああそうだ、手を出せよ」

 ぶっきらぼうな言葉に従って、手を広げる。するとそこに、無造作に冷たいものを落とされた。
 四葉のクローバーのブローチだ。

「やるよ。四葉のクローバーは戦火を生きのびるジンクスがあるっておふくろが言ってた」
「……ありがとう」

 きっと、私が買い物に夢中の間に探してくれたのだ。
 ギュッと握りしめる。

「ご武運を」
 
 ウォルフはそう言って静かに笑い、背を向けた。
 私はその背に手を振る。

 振り返らないと思っていた背中が急に立ち止まり、振り返った。 


 ウォルフは顔をくしゃくしゃにして笑うと、くるりともう一度背を向けた。その背はもう振り返らなかった。



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