【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「……いるんですね?」
クスクス笑いが広がる。
「もしかして、あの方ですか? あの救護所で」
言いかけた幼馴染の唇を人差し指で抑えた。彼女は顔を真っ赤にして口を閉じる。彼女は救護所の警護をしていたのだ。
「それ以上はダメ。知ってるでしょう? 王都で私は男だということになっているんだ」
ここにいると忘れてしまうけれど、王都の私は男でなくてはいけない。
「『宵闇の騎士』は人を好きになったりしない」
きっぱりと告げれば、みんな顔を見合わせた。
「……そんなのって酷い……」
誰が言ったか分からない小さなつぶやきが聞こえた。