【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
夢みたいな話だと思う。アイスベルク家にはそんな権力はないし、あったとしても、周りが受け入れないと思う。
か弱きレディーを守ることそこそナイトであり、騎士道、なのだ。
「それより私はね、ベルンに聞きたいことがあったの」
「なんでしょう?」
「シュテルンヒェン殿下のことよ」
唐突にシュテルの名前が出て、心臓が跳ねる。顔が熱くなる。
それを見てお姉様が楽しげに笑った。
「あれから傷の方はいかがかしら?」
「すっかり良くなっています」
「心配していたの。マレーネ姫から相談を受けて、オイルをお分けしたのだけれど」
「あれはお姉様のオイルだったんですか?」
「ええ。というよりも、私が小さかったあなたのために作ったオイルよ。覚えていない? ベルンはしょっちゅう怪我をしてきたから。女の子に傷があってはいけないでしょう?」
「それで、あんなに懐かしかったんだ……」
呟けば、ピクリとエルフェンお兄様の眉が上がった。