【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「なんて素敵なの!」
マレーネ姫はパチパチと拍手をした。まるでマジックみたいだ。
早速手を伸ばそうとする姫の手を柔らかく制し、私はカップを拝借した。
「失礼します」
安心して飲んでもらえるように、カップに口を付けた。カップや紅茶に毒が入っていないことを分かってもらうためだ。
ヴルツェル侯爵家を疑っているわけはないが、神出鬼没の手紙を送り付ける相手なのだ。用心として毒見をすることは、初めから了承を得ていた。
「外ですのでご無礼ご容赦ください」
「あ、べ、ベルンさまぁ……」
マレーネ姫が顔を真っ赤にしている。どうしたのだろうか。
「このようなこと私たちが致しますのに」
侍女に咎められる。
「あなた方が倒れたら困るでしょう? 私たち騎士は毒耐性をつけるための訓練をしておりますからご心配なく」
安心させるために笑って見せれば、メイドも侍女も顔を真っ赤にして黙ってしまった。
「ありがとうございます。とても美味しいです」
マレーネ姫がお茶を一口飲んで言った。
恥ずかし気に頬を赤らめるその姿は、とても可愛らしかった。