【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
私が先に制圧したからだとも思えるが、武器の所持はなかった。
殺害や誘拐予告があったわけでもなく、その場でも意味不明な言葉を吐いて、花吹雪を舞わしただけだ。土壁作るのは意味が分からないけれど。
法で裁くには根拠が乏しいと言えば、乏しい。
「しかし、姫の部屋や行き先を調べております」
「職務上知り得ただけと言われたら?」
「それを私用で使うのは、正しいことではありません」
「でも、厳罰に処するほどの根拠はないのですわ」
マレーネ姫の考えがわからない。法で裁く前に抹殺でもしようというのか。あの変態ならそれも喜びそうだ。
「姫様、何をお考えです?」
「お姉さま……」
茶色の瞳がトロンとしている。
「わたくし、初めての気持ちを知ってしまいましたの」
「もしや、あの変態に変な術でも!?」
「いいえ、お姉さま。私あの方とお友達になりたいのですわ」
「は?」
思わず素で聞き返してしまった。あの変態と、この清らかな姫がお友達? イヤイヤ、無理だろう。
「お話、したいのです」
マレーネ姫は確かにそう言った。