【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「マレーネ姫から日記帳を預かってきました」
「はっ、はは」
ひきつり笑いしながら、なんか泣いてる。キモイ。
「手紙のように、私室へ届けて欲しいとのことでした」
「はぁぁぁぁ、マレーネたん、女神……」
私もそう思う。こんな変態にどんだけ心広いんだ。
「今回は大目に見ます。しかし、姫の優しさに漬け込んで、困らせるようなことだけは、くれぐれもなさらないでください」
キッパリと言えば、ザントは不敵に笑った。
「メイドさん、おんにゃのこでしょ?」
「何を当たり前のことを」
「いや、ベルンシュタインちゃん」
ピリリ、空気が凍る。頭のなかに反響する血液の音。バクバクと煩い。