【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 今日は使用人の格好をして、目立たないように舟ででる。伝統的にそういう習わしらしい。小さな小舟は不安定でそれを漕ぐのも面白かった。
 夜店を回る。串焼きの肉を買って、歩きながら三人で食べる。
 町の真ん中で、寸劇が始まった。この祭りの謂れらしい。シュテルは興味なさげだが、私とフェルゼンは初めて見るから面白かった。
 
 気さくなアクセサリーの店が輝いて見えた。思わず足を止めてしまう。
 
「見てくか?」

 フェルゼンに問われて驚いた。男の格好なのだ。

「髪止めあったぞ」

 フェルゼンが言った。そうか、髪止めを理由にすれば覗いても変ではない。
 本当によく気を配ってくれる。ありがたい。

「じゃあ、記念に何か買おうかな」
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