【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「綺麗だ」

 フェルゼンの声に頷く。
 本当に美しい輝きだ。

「ああやって、降りてきた祖先を天に還すんだよ」

 シュテルが言った。
 そして、先ほどもらった紙袋を広げる。これがランタンだったのだ。
 中に蝋燭を入れ、フェルゼンに火をつけてもらう。中の空気が温まって、ランタンが手から離れる。自ら天に昇って行く。

 そして、空で燃え尽きて闇の中に消えた。

 すべてのランタンが暗闇に消え、静寂に包まれた湖畔を、人々が後にする。
 私たちはそれを見届けてから、帰りについた。

 真っ暗な湖を舟で渡る。
 舟を漕ぐ櫓の音だけが響く。
 明日の朝まで、使用人は帰らないそうだから、私たちは大人しく部屋に戻った。

 
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