【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「! こういう場で二人きりになるなんて、同意だろう! 常識だ!」
「嫌がっていたら離れるのが常識では?」
フェルゼンがさらに問い質せば、紳士は慌ててその場を去った。
私と気がついていないフェルゼンに安心して、頭を下げる。
本当に助かった。
フェルゼンは怒ったままの顔で、私を見つめた。赤い目がギラギラしている。本気で怒っているのがわかる。
「夜会では、本命以外の異性と安易に二人きりになってはいけない」
フェルゼンの非難のこもった声に、シュンとして頭を下げる。
令嬢として社交界に出たことがなかったから、その辺りの決まりを知らなかった。
「知らなかったのなら、気を付けるように」
うなだれた私を慰めるように、フェルゼンの大きな手が私の頭に乗った。