【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
ツキリ、北の国の姫の話が出て、胸が痛んだ。北の国の姫とシュテルの間には、以前婚約の話が出たことがあったのだ。
シュテルが断って話はたち消えたが、そこまでが大変だったようだ。その姫君が来ることに、なぜだが不安になってしまう。
美しいと有名な北国の姫。どんな人なのか見てみたい、でも見たくない。騎士姿のシュテルを見て欲しくない、見られたくない。
「制服姿でタンゴを踊れば壮観だと思う」
「ええぇぇぇ……男同士のタンゴなんか見て面白いか?」
不満の声が上がる。
「ベルン!」
突然呼びつけられて驚いた。
手を差し出されたから、思わず手を取る。
グッと腰を引かれ、腕を伸ばされた。タンゴのポーズをとらされる。背中がのけ反って、ハラリ髪が落ちる。