【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
 
 それからは、毎日タンゴの練習になった。クラスでの合同練習はなかなか迫力がある。
 軍隊だから、全員がピッタリと息をあわせるようにスパルタだ。軍服スラックスの一糸乱れぬラインが美しい。
 練習にかこつけて、シュテルと踊れるのがうれしかった。
 こんなことでもなければ、ダンスをシュテルと踊ることなどできないからだ。恋人みたいな距離感。でもみんなと一緒に練習だから、後ろ暗いことなんてない。
 単純に嬉しくて、楽しかった。


 迎えた学園祭一日目。
 七ペアほどの男子が、カツカツと足音を立ててダンスを踊る。センターはシュテルと私だ。
 その後ろではバンドネオンやバイオリン、ギターを奏でる騎士がいる。フェルゼンが伸びのあるテノールで愛を歌う。
 コミカルなダンスから始まって、男同士だからこそのアクロバットなターン、しっとりしたパート。
 長い足を絡ませあって軽快にステップを踏む。少し乱暴に抱き上げられて腰に絡みつくように足を回せば、そのまま体を軸にしてクルリと反対側に下される。ターンして突き放せば、それ以上の力で引かれる。挑発的に輝く金色の瞳に、私も負けじと見つめ返す。
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