【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「ベルン先輩!」

 少し休憩しているとクラウトがやって来た。トッピングにクラウトの実家のジャムを使っているので、補充を持ってきてくれたのだ。薔薇や金木犀のジャムは目にも美しく、女性に大人気だった。

「タンゴ……素晴らしかったです!」
「ありがとう」
「……その、私とも」
「だーめ!」
「え?」
「踊って欲しいとかいうつもりでしょ? それ、何回も言われてて疲れてるんだよ」

 辟易した顔で答えれば、クラウトは情けない顔で笑った。

「何回も……」
「そうだよ、知らない人も冗談で言ってくるからね」
「……大変ですね」
「でも、盛り上がったならいい」
「すごい盛り上がりでした」
「よかった! 練習したかいがあったよ」

 ホッとしてほほ笑めば、クラウトも笑った。

「お疲れのベルン先輩には、後でヴルツェルのお茶を淹れますね」
「本当? 嬉しい! マロウのお茶ある?」
「ええ、もちろん! 終わったらお部屋に伺います」
「待ってるね」

 クラウトはそう言って持ち場に戻っていった。


 

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