【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
閉会式が始まった。
「本日は北の国よりお祝いをいただいております」
司会の説明にどよめきが起こる。
大きな布をかけた、四角い箱。まるで何かの獣が入っているような気配がする。
その隣に北の国の姫君が微笑んで立っていた。
しっとりとした黒い髪は腰まであり、艶やかに輝きを放っている。対照的に真っ白な肌はまるで雪のようだ。赤い唇はまるで血のようで、妖艶にほほ笑む姿に心まで奪われそうな美しさ。
この人が、シュテルを望んだ。シュテルはこんなに美しい人を見ても、どうして断ることができたんだろう。
北の国の姫君は、黒い瞳をきらめかせて、箱を覆った布に手をかけた。
ゾクリ。肌が泡立つ。
振り返って観覧席を見る。いる。アイスベルクの女騎兵たちが手を振っている。
ふっと息を吐いて力を抜いた。
大丈夫。