【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
そう言って、リリトゥに走り寄り、その勢いのままシュテルのサーベルを投げつけた。
胸に刺さったサーベルが、リリトゥの中で溶けていく。水銀の毒が効いていく。そのままリリトゥは地面に落ちた。それでも小物モンスターはまだ立ち向かってくる。
「立てる者はあるか!!」
シュテルの凛々しい声が響き渡った。
「……おお……!」
ムクムクと周りの士官学生たちが起き上がる。リリトゥが倒れたことで、みんなの呪いが解けたのだ。
それを見て、北の国の姫君は崩れ落ちた。
フェルゼンと目が合った。真っ青な顔をしている。心配している、分かってる。だから。
私は唇に人差し指を当てて、シーっと合図を送る。小さいころから繰り返してきた、秘密の合図。
私は、もうここにはいられない。
すべて明らかになってしまったから。
フェルゼンが悲痛な顔をして頷いたから、手を振って戦えと指示をする。フェルゼンは何かを振り切るように赤い髪を振って、炎の壁を私達と観客席の間に繰り出した。
きっと逃れるための目くらましだ。
こんな時まで、フェルゼンは優しい。
ここはもう大丈夫だ。後はみんなが何とかしてくれる。
私は女騎兵たちと逃げるようにしてコロッセオを後にした。