【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
31.青い琥珀(シュテル視点)
初めて見るモンスターに、目を奪われた。見たことのない美しい鳥。その翼は、赤と青の炎がきらめいていた。甘美な鳴き声が頭中に響きわたる。
- みんな忘れて。愛をあげよう。許してあげるよ、ここへおいで -
滑らかな歌声が頭の中に充満する。沸き上がってくる渇望。何が足りないんだろう。何が欲しいんだろう。分からないけれど、何かが欠けているのは分かる。満たされてない。足りてない。もっと欲しくて、餓えている心。
あの鳥の元へ向かえばすべて満たされるのではないかと思う。
鳥に向かって、一歩足を踏み出す。きっとその先は天国だ。
胸から何かが盛り上がって、喉の奥につかえた。邪魔な物。こんなものを失くしてしまえば、楽になれるのではないかという甘美な誘惑。
苦しい。
手放してしまいたい意識。そうしてはならない騎士のプライド。何かが僕を引き留める。葛藤がせめぎ合って、頭と心を苦しめる。早く楽になりたいのに。