【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
32.世界が崩れるとき(シュテル視点)
暗い部屋で、部屋の主フェルゼンの帰りを待つ。もう一人の主ベルンは戻ってこない。
僕は先ほどまで、軍部の調査を受けていた。フェルゼンはまだ少し時間がかかるだろう。
フェルゼンは、幼年学校からずっとベルンと同室だったのだ。性別を知っていたのではと、当然のように聞かれているはずだ。
僕は知らなかった。
あんなに小さい頃から知っていたのに。
ずっと秘密にされてきた。
信じられて、なかった。
ガツンとテーブルを殴る。
どうして。
王子だったからなのだろうか。どうして男と偽る必要があった?
ずっとずっと、嘘をつかれていた。