【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「なんだよ、泣くなよ」
「待ってたんだぜ」
「間に合って良かったよな」
うつむく頭にたくさんの手が乗ってきて、グシャグシャと頭を撫でていく。そんな距離感も前と変わらなくて安心した。
「ありがとうじゃないだろ?」
フェルゼンが私の顔を覗き込む。久々に見る焼けた肌。赤い瞳が優しく微笑む。
「おかえり、ベルン」
フェルゼンがもう一度言った。
私はそれを聞いて微笑む。
「うん、ただいま」
ここへ帰って来た。ここにはまだ居場所があった。