【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「あー……疲れた……」
声に出したら、フェルゼンが笑った。
「それほど踊ってもいないくせに。いつだって壁の……花? ん? じゃないよな?」
壁の花とはご令嬢に向けて言う言葉だ。
「何でもいいけど。誘われたくないし、私は出てもしょうがないからね。目立たないようにするのも結構疲れるんだよ」
なんてったって、周りの目立つ連中が声をかけてくるから、折角壁の模様にでもなろうとしていても、嫌でも目立ってしまうのだ。
「へー。いいなーってヤツいなかった?」
「いても困るでしょ。付き合えるわけないんだし。責任も取れないのに、変な噂でも立って、相手のご令嬢に迷惑かけられないし」
「つーか、想定する相手はご令嬢、なわけだ?」
「? 何言ってんの。燕尾服だよ? これで紳士を口説くわけないでしょ」